入院日記その2
7階内科病棟へ引っ越しして2日で、母は有名人になりました。
病院は、6時に起床で、廊下の電気が一斉につきます。
6時半、私、病院に到着。
出来るだけ静かに廊下を歩いて、母の病室に向かいます。
ところが、何だか随分賑やかに笑い声や話し声が聞こえて来ました。
もちろん、母の病室です。
《なにやってるんだろう・・・》
見ると看護士さんとDSiで遊んでいました。
私が入って行くと、看護士さんが、
「すごいですよねー。DSi」
母 「写真撮りましょう!」
看護士さん 「えー! でも夜勤明けだからなぁ・・・」
と髪を手で直しています。
母 「他の看護婦さんの写真も撮ったのよ。」
看護士さん 「そうなんですかぁ・・・」
母 「でもね。内緒だけど美人しか撮らないから・・」
看護士さん 「またぁ・・・。じゃあ一緒に撮りましょう!」
と母の顔の横に並んでポーズ。
私が撮りました。
母 「看護婦さんはおいくつですか?」
看護士さん 「いくつに見えますか?」
母 「そうねぇ・・・25歳まで行ってないかな?」
「23、4歳?」
看護士さん 「えぇ!」・・・と嬉しそうです。
「えっと何か・・飴でも(探す振り)
っっとっと糖尿だからだめなんですね!(笑)」
母 「お嫁さんに行かないの?」
看護士さん 「もうそう言う年なんですけどね。」
母 「いい子探してるんだけど」
始まりました。私の義弟のお嫁さん探しです。
看護士さん恥ずかしそうに笑っていました。
看護士さん 「この部屋に来るとつい長くなっちゃって・・・
また暇な時に遊びに来ます」
母 「はい、いつでも遊びに来て下さい。
看護婦さん、皆さん、ここに遊びにいらっしゃるんですよ。」
《って、ここはいったいどこ?》
次々と看護士さんが、「このお部屋は楽しくていいですね。」とか
母が編んでるチョッキを見て、
「すごい、これ編まれたんですか?買ったみたいですね。」とか
「新しいDSiじゃないですか!」とか大騒ぎです。
何だか、病院じゃないみたいです。
母が私に教えてくれました。
「何だかね。 ナスでみんなが話してるだって、私の事。
若い若いって言ってるらしいよ。」
ナスって言ったって紫色の茄子の事ではありません。
ナースステーションの事なんです。
私も最初は何の事だか、わかりませんでした。
看護士さんや、はたまた先生までもが、母の事を面白がって
いるようです。
家の旦那が丁度、母の部屋から出てきたばかりの
回診中の先生方の話しを漏れ聞いたそうです。
「あの年で、やる事がすごいよなー」
前の入院の時は、手術をしたので2ヶ月ぐらい入院していました。
その時は、DVDプレイヤーを持ち込んで、毎晩、1本から2本の
映画を見ていました。
回診の先生が、それを見て、見たかった映画なので、
貸してもらえないかと言われて貸し出していました。
母が見るのは洋画ばかりです。
若い頃、人との待ち合わせを、映画館でしたそうです。
その為、『毒薬と老女』と言う映画は4〜5回見てしまった
そうです。