先生のお土産
旦那に言われてしまいました。
「うちの母は、ケセラセラ♪」は、明るくスカっとした
ブログのイメージなんだけどね、 と。
つい泣き言ばかりを書き連ねてしまっていました。
私は、弁解しました。
「だってしかたないよ。 まだ5ヶ月にもなってないもの。」
母は、楽しい雰囲気を作るのが、うまかったのに・・・。
だから、自分の体がどんなに辛くとも、冗談を言ってしまう。
これはもう母の体質だと思います。
入院中、水分補給は、出来れば、お水よりも
ポカリスエットなどの水分の吸収が早く、
イオン(電解質)のバランスをよくするスポーツ飲料を
飲むように言われていました。
しかしながら、母はこのての健康飲料を好みません。
始めはそれでも、我慢して飲んでいましたが、
段々お水のほうがいいと言って飲まなくなりました。
家に帰ってから暫くして、お水が飲みたいと言うので、
黙ってポカリスエットを吸い呑みに入れてあげてみました。
母は、「冷たくておいしいね。」と言ったので、
私は、もしかしたら気が付かないのかなと思い、
水が飲みたいと言うたびに、ポカリをあげていました。
母は何も言わずに飲んでいたので、これなら大丈夫だと
思っていたのですが、
ある時、「お水」と言うので、ポカリを入れて冷やしておいた
吸い呑みを冷蔵庫から出して母にあげました。
母は一口飲むと、
「今度はお水が飲みたいね。」と言ったんです。
私 「え?・・・」
母 「スポーツ飲料でしょ? 」
まいりました。
騙された振りをしていたんです。
最後の頃
吸い飲みでお水を飲むのにも、
気管に入らないようにする為、
母に顔を横に向けて貰っていました。
私 「お母さん、顔、横に向けてくれる?」
母 「・・・」
私 「横向けないと、むせちゃうよ!
横向いてよ!」
横を向いて私の顔を見ると母は、
「あっぷっぷ」
そう言ったんです。
たぶん、私は怖い顔をしていたんでしょう。
余裕のない顔をして、「顔を横向けて!」と
言っていたと思います。
そんな私の顔を見て、母は、
和ませてくれました。
ゼリーだったか・・・何かを食べていた時も・・・
私 「美味しい?」
母 こっくりと頷きました。
私 「もっと食べる?」
母 また頷きました。
私 「もう全部飲み込んじゃった?
ごっくんってやってみて」
母 「ごっくん」
と言葉で言ったのです。
飲み込むのではなく、ただ言葉で、「ごっくん」と言ったのです。
私は思わず吹き出してしまいました。
亡くなるまで、本当によく話しをしました。
痛み止めの薬でうつらうつらしては、
よく夢を見ていたようで、夢の話しもよくしてくれました。
私達にわかるように、時にはゆっくりと。
往診の先生が来た時、
母 「先生、私の叔父も医者なんですよ。
外科医なんです。」
先生 「そう。可愛がって貰ったんでしょ。」
母、頷いて 「風邪ひくとね。甘い薬をくれるんですよ。
それが好きでねぇ・・・。」
先生、頷いて聞いていました。
亡くなる前日の夕方も、
先生の顔を見るなり、
母 「先生、お土産お願いします。」
先生、笑って、 「ああ・・・お土産、何がいいかな?」
母は、それには答えませんでしたが、
翌日、先生のお土産は間に合いませんでした。
入院時に、黄色い一輪挿しと一緒に頂いたカトレアです。